ソーシャルメディア時代に求められる、お客様との向き合い方

店員を土下座させて写真をネットに公開して逮捕される、従業員が食器洗浄機に入ったおふざけ写真をネットに公開してお店がつぶれる、異物が混入した食品の写真をネットに公開して製造中止に追い込まれる。その一方で、お客様による情報の拡散をきっかけに、売り上げが数倍に跳ね上がる商品も存在する。ソーシャルメディアの普及により、私たちを取り巻く商環境は大きく変化したように見受けられます。この時代に適応する為に必要な、売り手とお客様とのスタンスについて考えます。

 

SNSを手に入れて、変わったものは何か?

特に事件性を帯びた前述のような報道を耳にすると、ソーシャルネットワークという武器を手に入れた一般消費者に対して、脅威を感じる経営者も多いと思います。消費者が買い物をする際に感じた不満は、昔ならせいぜい知人に愚痴を言って終わる程度だったものが、いとも簡単にSNSを通じてアップされ、時には大手メディアに取り上げられて一気に拡散します。友達に見せびらかす程度の軽い気持ちでアップしたものが、日本中に拡散するなんて考えもしない「調子ノリ」が引き起こす事件が増えたのも、売り手の不安を増徴させる一因でしょう。

こうした事件につながる話題だけを耳にすると、売り手と買い手の「力関係」が大きく変わってしまったかのように感じられます。一部の「調子ノリ」を調子に乗せない為に、売り手がビクビクしながら接客しなければならない世の中になったと嘆く経営者もいらっしゃるでしょう。しかし、実は売り手と買い手の関係性そのものは、まったく変わっていません。変わったのは関係性ではなく主に声のボリューム、個々が発する情報の到達力です。

SNSを通じて社会が手に入れたモノ、それは例えるなら「拡声器」だと言えます。もの凄く声の通る高性能な拡声器を使って、知人に向けて気軽に何でもしゃべる。正しかろうが間違っていようが、とにかくいつも通り何でもネット環境を利用してしゃべります。ところが何せ拡声器としての性能がいいので、本人が考えている以上の範囲にまで声が届いてしまう、ただそれだけの事です。

例えば以前コンビニの店員を土下座させネットにアップした当事者達は、ネット民に個人情報を暴かれ激しく糾弾された為、このままでは逃げ切れないと警察に自首しました。ボーリング場の店員を土下座させた事件は、つい先日、発生からわずか4か月で実刑判決が出ました。第三者がネットで個人情報を暴く事への是非はともかくとして、これらの事実は、行き過ぎた要求をする顧客をクレーマーとして認識する民意がまだ存在する事を意味します。SNSの普及により変わったのは消費者全体のモラルではなく、あくまでも個々が発した言葉の到達力でしかないわけです。

 

お客様と真摯に向き合う事が、商売では最大のリスクヘッジになる

では、SNSの普及により一般消費者個々の情報到達力が飛躍的に向上した現代で、私たちはどのような経営スタンスを取ればいいのでしょうか。まず経営姿勢として求められるのは、顧客に対する誠意が伝わる一貫性のある接客などの顧客対応です。売り手が必要以上の保身に走らず、お客様と誠実に向き合う経営スタンスが、組織の階層を問わず貫かれていると外部からも判る立ち居振る舞いを徹底する事が求められます。

行き過ぎたクレーマーの言動に対しては、最終的に民意が良識をもって判断してくれる世の中だという事は、前述の事例などから証明されています。そもそもお客様に対してリスペクトが無かったり、有事の際には顧客を切り捨て組織の保身に走るなど、明らかに売り手の姿勢に落ち度がある場合は論外ですが、過剰な要求や大声でささやかれる風評に対しては、臆することなく毅然と振舞う企業風土を身に付ける事こそが、最終的には以前からのお客様を離反させない最良の策だと言えます。

また、このような経営スタンスでお客様と向き合う企業風土が既に存在するのであれば、売り手も消費者と同じようにソーシャルメディアを活用し、広告宣伝だけを目的としない情報を既存顧客に向けて発信し交流を持つ事で、オフライン時代の何倍もの規模やスピードでお客様との関係を深めていく事が、可能かつ重要だと考えられます。

タダで宣伝出来るというネットにありがちな謳い文句に乗っかるのではなく、顧客を大切にし、お客様と真摯に向き合う姿勢を発信する事で、既存顧客のファン化を促進させ、お店や企業の味方をストック出来るというポテンシャルが、ソーシャルメディアには存在します。オンライン・オフラインを問わず、ファン化が促進されると心無い風評に対しての影響を最小限に留めてくれるリスクヘッジにもつながります。

ネット環境やSNSがどれだけ進化しても、私たちが手にする道具の特性が変わるだけで、それを使う人間の本質は変わりません。むしろSNSの普及により、売り手・買い手双方の人間性が見えやすくなったと言ってもいいでしょう。ツールに翻弄されて右往左往するのではなく、目の前のお客様ときちんと向き合い、適切な関係性を保つ事に注力しましょう。