ソーシャル時代の商品開発は「わさビーフ」に学べ

「わさビーフ」を販売する山芳製菓がエイプリールフールに発表した架空の新商品「手抜きわさビーフ」が全国販売されます。この事例には、ソーシャル時代における新しい商品開発のヒントが隠されています。

 

「嘘から出た誠」を地で行く、山芳製菓のエイプリールフール戦略とは

山芳製菓が、エイプリールフールに発表した架空商品を実売につなげたのは、今回が初めてではありません。2015年のエイプリールフールに発表した、中身のない「全部抜き」はさすがに商品化されませんでしたが、2014年には「わさビーフ」の「わさび抜き味」を発表し、その後販売に至っています。

『ポテトチップス「わさビーフ」を製造販売する山芳製菓は、19日から「手抜きわさビーフ」を全国のコンビニエンスストアで販売する。今年4月1日に、エープリルフールの架空の「新商品」として発表していたが、反響が大きかったためイベント「ニコニコ超会議」で限定販売していた。同社は2014年4月1日に、エープリルフールの架空の商品として「わさビーフ」の「わさび抜き味」を商品化すると発表。ツイッターで4万回を超えるリツイートをされるなど、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなどで話題となり、同年11月、実際に全国発売している。
毎日新聞 「手抜きわさビーフ」 反響大きく全国発売 味付けも自分 2016/07/04』

エイプリールフールに合わせて、ウィットに富んだ「ネタ」を発表する企業は年々増えています。メディアに取り上げられることで話題にもなりますし、遊び心のある企業だと認知されることで、企業ブランドのイメージ向上にも一役買っています。山芳製菓が他社と違うのは、一過性のウケ狙いで終わらさず、商品につなげることが可能な範囲でのネタを発表したことにあります。初回はただのジョークだったのかもしれませんが、今年は発表から発売までの期間が前回よりかなり短いことから、企画段階から販売を視野に入れていたと考えられます。

 

イベントを活用して商品リサーチが出来る、ソーシャル時代の企業メリット

そもそもエイプリルフールに「ネタ」を発表する企業が増えたのは、エイプリルフールというイベントが日本に浸透してきたから、という理由ではありません。面白いと感じた消費者がSNSを使って拡散させ、話題となることにメリットを感じた企業が行っている広報活動です。ウィットやセンスを感じさせることでブランディングの一助としたり、露出による認知向上を目的としています。

多くの企業は、日頃まじめに企業活動を行っているからこそ生まれ得るギャップを「ネタ」にしているケースが多く、そのギャップは大きければ大きい程、販売可能な商品枠から離れていきます。それに対して今回の「手抜きわさビーフ」は、ウケながらも反応の大きさやその内容によっては商品化が可能な「落とし処」を想定した企画となっています。短期的な話題性やブランドイメージの向上を狙った広報活動は、その効果を金額換算することが難しいのですが、実売商品につなげることでそれが可能となります。

面白さで話題になれば、その規模に応じて消費者のコメントを含む反応を得られます。あらかじめ商品化を視野に入れたものを話題に乗せれば、好意的な反応の多いものだけを狙って販売できるというメリットがあります。これは、非常に精度の高いマーケティングリサーチを、極めて低コストで実施できることを意味します。リサーチ活動自体をイベント化することで、ブランディングの向上と売れる商品選定を同時に行うことが可能になるわけです。企業にとっては大きな武器だと言えるでしょう。

 

つながるだけでは勿体ない、ソーシャルネットワークを活用した商品開発

エイプリルフールの事例に限らず、ソーシャルネットワークを活用すれば、企業規模を問わずこうした活用が可能となります。ただ商品の宣伝をネットに垂れ流すだけではなく、開発段階の商品を紹介し、意見を募ることで改良の足掛かりを作ったり、反応の高さから商品ニーズの有無を判断できるようになります。反応から、ある程度の販売数が期待できるものだけを生産することで、少なくとも大コケするリスクを回避できます。工業製品から個人店の定食メニュー開発まで、等しく活用が可能な環境が現在のインターネットには備わっています。

また、商品開発のリサーチ自体が、事実上商品の販売予告を兼ねているのも大きなメリットとなります。テレビのバラエティ番組などで、芸能人が試行錯誤を繰り返した食べ物が、最終的に商品となってコンビニで発売されるような企画がありますが、状況としてはこれに近いものです。単純に商品にまつわる情報の露出期間が長いことも理由のひとつですが、商品の完成までを見守った人たちにとっては、思い入れのある特別な商品という位置付けになります。購入してくれるだけでなく、積極的に宣伝をしてくれる可能性も高まります。

その為には、ソーシャルネットワークを通じた、日頃からの関係作りが必須となります。前述のエイプリルフールに便乗するのであれば、マスメディアを利用して拡散することも可能ですが、大前提として純粋な面白さが求められるという条件下では、参入するにも敷居が高過ぎるでしょう。参入障壁の低さという点では、ブログやツイッター、フェイスブックなどによる継続的な情報発信でファンを増やし、彼らと双方向につながるコミュニティを形成することが王道と言えます。