経営者の想いを従業員に伝える、最もシンプルな方法

小さな喫茶店から上場規模の企業まで、経営者が従業員を雇う理由は「自分ひとりでは運営できない」からですよね。事業主が考えたビジネスプランや商売への想いを事業主と一緒に、または事業主の代わりに、事業主と同じように考え行動してくれる同志が必要だから誰かを雇っているはずです。正社員やアルバイトという雇用上の位置付けを問わず、経営者が自分以外の誰かと一緒に思い描いた商売を実現する為には、実務の手順だけではなく経営者自身のポリシーや価値観を、出来る限りパートナーに移植する必要があるわけです。では、どうすれば移植できるのでしょうか?

 

経営者の想いは、基本的には誰にも伝わらない

経営者が従業員に、自身のポリシーや価値観を教育する為の方法はいくつかあります。

・常日頃から、直接言葉で伝える
・経営理念に組み込み、行動指針にする
・明文化、マニュアル化し、社内のルールにする

従業員規模や仕事の性質によって教育方法は違ってきますが、どの方法を選択するにしても、その教育内容を従業員に腑落ちさせ、行動に反映させる為のハードルを下げる鍵となる、共通するルールがあります。それは「経営者自身の姿勢や態度」です。経営者自身が仕事に取り組む姿勢、従業員に接する姿勢、ビジョンについて語る姿勢、自身が掲げたポリシーや価値観を自ら実践する一貫した姿勢が従業員に伝わるからこそ、そのビジョンに従業員は共感し、参加しようと行動に移します

本来なら、経営者や創業者が考え出した理念もビジョンもポリシーも価値観も、経営者以外の人間には何の興味も無いものです。経営者がどんなお店や会社を目指し、お客様とどんな関係性を築くのかなんて、従業員にとっては知ったこっちゃありません。ましてや経営者が事業を成功させ、結果的に年収数千万になってリッチな暮らしをしたいなんて欲望を伴う目標に至っては誰も興味ないわけです。

楽しい仕事をしたい、生活の為にお金が欲しい、充実した毎日を送りたい、多くの従業員は極めて個人的な動機で就業を決意します。ですので勤務初日から、アカの他人である経営者のビジョンを聞いただけで感化される従業員なんて、実際にはほとんど存在しません。様々な思惑をもって入ってきた従業員が、仕事を通じていろんな物事に対する経営者の姿勢や態度を、目で見て肌で感じる事で感化され、徐々に経営者と同じ気持ちになっていく、というだけの事なんですね。

 

ただ掲げるだけの理念やビジョンなら、最初から無い方がマシ

経営者の商売に対する考え方や価値観を知るだけでなく、それを絵空事ではなく経営者自らが実践しているという「言動一致の状態」が、従業員のモチベーションを決定します。経営者がお客様と従業員を大事にする行動をとれば、従業員はお客様と経営者を大事にする行動をとるし、経営者が言動不一致のブレた行動をとれば、同じように従業員はブレる行動とります。経営者の立ち居振る舞いが、従業員の育つ環境を決定すると言っても過言ではないという事です。

上っ面の「いい言葉」なんて誰でも言えます、お客様を大事にだとか社員は宝だとか、どこの会社やお店でも言ってます。しかし、その言葉が従業員の心に響くかどうかの鍵は「その言葉を、どんな行動をしている誰が言ってるのか」というところにあります。会社やお店の偉い人が言ってる言葉だからじゃなく、人としての姿勢が偉い人の言葉だから、従業員は経営者のビジョンに共感し、自分自身もそれをやってみよう、やらなきゃいけないなと思うわけです。

経営者の発する言葉や立ち居振る舞い、要するに経営者自身の言動そのものが、従業員にとって最大にして最高の行動規範だという事を、特に末端の従業員の顔が見える中小規模の経営者は、忘れないようしたいですね。