なぜスターバックスで働くことは「あこがれ」になるのか -飲食店の慢性的な人材不足は、飲食業界全体の怠慢が生み出している-

飲食店の慢性的な人材不足は、飲食業界全体の怠慢が生み出している

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先日飲食業界で、ある調査が行われました。

目次

もともと多くのスタッフを必要とする、飲食業ならではの事情

『飲食店専門の求人情報サイト「求人@飲食店.COM」(シンクロ・フード運営)によると、首都圏・関西ともにサービス・ホールスタッフが最も人手が足りていないことが分かった。2013年以降連続して求人件数が1位になっており、慢性的な人材不足が続いていることがうかがえるという。1位のサービス・ホールスタッフはアルバイト求人が54.2%だったのに対し、2位の調理スタッフは正社員が58.0%。シンクロ・フードは「スキル・経験の豊富さを求める場合は正社員のニーズが高くなり、やる気・人柄を重視する傾向がある場合は、人件費の安いアルバイトのニーズが高くなる」と分析している。
ITmediaビジネスオンライン 2016年、飲食店で最も人手不足だった職種は? 2017/01/13』

そもそも飲食業は他業種の店舗ビジネスに比べて、スタッフの頭数がより多く必要となるビジネスモデルを有しています。たとえばオフィス街にある定食屋の場合、提供できる商品メニューはあらかじめ数点に絞られていますが、厨房に完成された定食を積み上げてお客様からの注文を待っているわけではありません。仕込みという形である程度の準備こそしていますが、調理の最終工程はお客様の注文が通ってはじめて開始されますので、厨房には常に注文数に見合ったキッチンスタッフが必要です。

ホールスタッフについても同様で、テイクアウト専門店ではない限り接客対応は商品を渡してハイさようならとはなりません。お客様が来店してから退店するまでの少なくとも数十分は、何らかの形で「お世話」を行うことになります。加えて飲食店の多くは、人間が空腹を満たす為に来店しますので、朝・昼・晩の食事時間帯に来客が集中します。オフィス街なら昼12時と午後3時の客数差は十数倍にもなる為、ピーク時間帯だけ必要なスタッフ人数が跳ね上がりますし、逆にどれだけ客数が少なくてもキッチン、ホールそれぞれの仕事を覚えたスタッフを最低人数は常駐させておく必要があります。

既製品や加工品を店頭に並べて販売するだけの業種とは比較にならないスタッフ人数が必要な上、客単価や利益率が特別に高いわけでもありません。多くの人材が必要となる為、もともとの人件費比率が他業種と比べて高いにもかかわらず、人手を使っている割には客単価を上げにくい業種でもあるので、高額の給与待遇を謳ってスタッフを募集することも難しいというのが現実です。

店舗オペレーションの合理化だけでは解消しない、飲食業の人材不足

どんなに多くの人材が必要な業種でも、常に必要なスタッフ数を確保で出来ているのであれば何の問題もありません。しかし飲食業は、実際には長期にわたって人材不足は続いていますので、何らかの対策を講じなければ失客が続き商売の継続が不可能になります。

真っ先に浮かぶ対策は、オペレーションの機械化や合理化で必要人数を減らす仕組みを作ることでしょう。一定規模以上の飲食チェーンが導入しているセントラルキッチンや、タッチパネルでのセルフ注文システなどが代表的な例です。資本の乏しい個人店舗でも、仕入食材や仕込みの合理化、接客の一部をセルフサービスにするなどの対策は可能です。現状の営業スタイルへの執着を捨てて、少ない店舗スタッフでお店をまわすことを最優先にオペレーションを見直せば、特に食事ピーク時間帯の必要人数を減らす為の施策は必ず発見することが出来るでしょう。

しかし、残念ながら店舗のオペレーションを見直しただけで、飲食業界全体の人材不足が劇的に解消されるほど、飲食業界の人材不足は簡単な話ではありません。なぜなら、就労可能人口の絶対数が不足しているのではなく、飲食業で働いて欲しいという需要と飲食業で働きたいという供給が釣り合っていないことにも原因があるからです。なぜ飲食業は人手不足になりやすいのかという根本的な問題を、業界全体の問題として改善に取り組む必要があるわけです。

業界全体で築き上げてしまった、飲食業の印象を刷新しよう

前述の通り、一般的に飲食業はその性質から多くの人件費が必要となる為、扱う商品や客単価にもよりますが、一律で募集時給を高く設定することが非常に難しい業種です。給与が高くない以外にも、店舗運営に携わる為に覚える仕事量が多く守備範囲も広い、対面接客業である為ストレスにさらされやすい、などの特徴があります。

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これらの要因は、就業先として選ばれにくい状況を生むだけでなく、離職率の高さにもつながっています。ただでさえ多くの人手が必要な業種なにの、働きたいと思わせるアピールにつながる魅力に乏しい上、せっかく入った貴重な人材が早期で退職する傾向がある為、人不足が常態化しているわけです。バスタブにをお湯を溜めたいのに蛇口からお湯がちょろちょろとしか出てこない上に、底の排水栓もしっかり閉まっていない状況だと言っていいでしょう。

店舗オペレーションの合理化・スリム化や人材確保に奔走する前に、まずは労働環境の抜本的な見直しを行い、飲食業界で働きたくないと思わせる要因や、店舗スタッフが早期に退職する要因をつぶし、魅力的で辞めにくい業界への変貌が求められます。

飲食業界全体は人手不足なのに、なぜスタバのアルバイトは「あこがれ」なのか

慢性的な人材不足と言われる飲食業界ですが、求人媒体のanが15~24歳の若者に対して行った「やってみたいアルバイトのブランド」のアンケートでは、スターバックスコーヒーが飲食業という枠を越え、二年連続で一位を獲得しています。

『1位に輝いた「スターバックスコーヒー」は、回答者のコメントを見ると「おしゃれ」一辺倒ではない意見が多く見られ、「店員さんの接客態度がいい」「難しそうだけどかっこいい。一人前になれる感がある」「働く人の教育がきちんとなされている」といったコメントが特に多く見られました。おしゃれな店舗の内装・雰囲気や、美味しい商品があることが求職者にとって大きな魅力になっているのは間違いありませんが、臨機応変な接客で働くスタッフに対する憧れや教育制度に魅力を感じ「働いてみたい」と憧れる人も多いのです。
an report 2016年 若者人気アルバイトランキング 今年の人気アルバイトの傾向は? 2016/09/12』

非常に残念なことではありますが、飲食業を経営・運営している業界内部でも、接客業を技術職だと認識していない人間は少なくありません。調理は技術職なので一日では覚えられないが「いらっしゃいませ」と挨拶して注文を聞くのは初日からでも出来る、というのが彼らの理屈です。実際には挨拶や注文の聞き方ひとつでお客様を逃がすことにも掴むことにもなる、重要な鍵を握っているのにも関わらずです。

スタッフが集まり難くて続き難い、しかも高額な募集給与を提示できないという飲食業の現状を最初からあきらめ、スタッフは短期スパンで入れ替わるという認識のもと、安くコキ使える労働力で営業をつなげられればよいというムードが支配している組織も実際に数多くあります。

彼らが運営する店舗に共通するのは、根本的な接客業務に対する認識不足と、早期退職者が多い為にノウハウが現場に蓄積されにくい教育環境、早期退職を業界の「当たり前のこと」として認識している為に、店舗ごとに存在する「スタッフが辞める原因」を運営者側の努力で排除できる問題だと認識していないことです。

「働きたい」という気持ちを削ぐ原因を駆逐しよう

「スタバは同じ飲食業ですが、働きたいバイト先の第一位ですよ」と言うと、あそこは大手だからとかオシャレだからなど「ウチがスタバではない理由」を挙げ連ねる飲食業経営者が多いのですが、ここで事実なのは、飲食業界全体では慢性的な人材不足である一方で、ぜひ働きたいと思われている飲食業もある、という一点だけです。平成不況という言葉を鵜呑みにして、景気が悪いから儲からないと嘆いてばかりいる経営者がいる一方で、右肩上がりで成長を続ける同業者もずいるのと同じです。

なぜウチの店を気に入って働いてくれていたはずの彼らは、途中で退職してしまったのか。なぜ隣の雑貨屋の求人広告には応募があるのに、ウチの募集には反応しないのか。店舗オペレーションの合理化・スリム化を行う前に、まずはスタッフの「ここで働きたい」というモチベーションの芽を摘む原因を探し出しましょう。

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