低価格戦略に潜む最大のリスク

低価格戦略に潜む最大のリスク

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牛丼(並)280円、ドーナツ全品100円、ハンバーガー80円など、スタート時には大々的な広告宣伝の力も合わさって大きな話題となる、基幹商品の低価格戦略と呼ばれるものがありますよね。開始当初には過去最高の売り上げを記録する程の反響がある一方で、その数年後には例外なく減収減益の決算報告がなされ、低価格戦略が失策であったのではと世間で揶揄されます。なぜこのような事態に陥るのでしょう。商品開発や市場のリサーチにも潤沢な予算を確保しているはずの大手企業が巻き起こすこれらの顛末から、中小企業経営者は何を学べばいいのでしょうか。

目次

そもそも、なぜ低価格戦略に走るのか

お客様が商品を購入するお店を選ぶのには、必ず理由があります。家から近い、品質がいい、接客対応が気持ちいい、居心地のいい店内、そこでしか手に入らない、品揃えが豊富など、こうした購入理由は売り手にとっては言葉通り「ウリ」となります。自社のウリを探し、それを磨き上げ差別化するという戦略と企業努力を経る事でお店や企業はお客様に選ばれるわけですが、数ある差別化戦略の中でも最も訴求が簡単かつその破壊力が強いモノが「価格を下げる」というアイディアです。

売り手にとって、なぜ低価格戦略が魅力的に映るのでしょう。それは、価格が業種を超えて商品価値を数値化できる唯一の指標である上、消費者に一番理解しやすい客観情報だからです。もちろん資本力や原材料の調達力などの企業努力、円高・デフレなどの環境が味方するなどの条件は必要ですが、それでもあえて一言で言えば、値下げほど手っ取り早く簡単に集客を見込める戦略は無いわけです。

低価格戦略が及ぼす様々な影響

低価格戦略は確かに一番簡単で、しかも消費者には強いインパクトを与える戦略ですが、原価率が上がり利益をひっ迫するという強いリスクをはらんでいます。そのリスクを回避する策として、または低価格戦略を正当化する理由として経営陣が必ず口にする言葉があります。それは「価格を下げても、その分お客様が増えるから問題はない」「いつも買う商品に、プラスワンで低価格商品を買ってもらえれば、客単価の下落も最小限にできる」という趣旨のものです。

確かに理屈の上ではごもっともです。しかし、実際にふたを開けてみると決してそうはなりません。確かに一回目のプロモーションは高い反応があり、期間中はうなる程お客様が押し寄せますが、安売りを終えると潮が引くようにお客様はその場を去ります。安売り前のベースセールスに戻るのではなく、安売り前よりも減るという現実に直面します。

低価格戦略を採りたがる事業者の多くは、プロモーションとしての安売りが終わったら、プロモーション前の売り上げに戻るだけだと誤解しているように見受けられますが、実際は違います。何故なら、一度商品が安くなった事を体感したお客様は、本来の販売価格が高いものだと認識し始めるからです。

売り上げが下がった事への対策として、二回目・三回目の低価格販売を行いますが、初回程の反応はありません。更に価格を下げて消費者を刺激しようと試みますが、初回の反応を超える事は出来ないばかりか、プロモーション期間外のベースセールスも降下の一途をたどります。

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また、店舗スタッフのオペレーションでも問題が起こります。低価格戦略の為に本社サイドがどれだけ原材料を安く仕入れる努力をしても、それを販売する現場での店舗オペレーションを、価格に見合ったものにする事は事実上不可能です。定価での販売を想定して作られた店舗設備環境と、プロモーション期間だけ都合よく戦力となる従業員が確保できるわけでもない人的環境で、既存の従業員に過酷な薄利多売の為のオペレーションを強いると、当然のように現場の従業員は疲弊し、モチベーションも下がります。安い商品を作るから時給も安くするなんて事は出来ませんし、一か月だけ商品の製造販売を出来るスタッフを二倍にするなんて事も実際には出来ないわけですから当然です。

なお、値下げに対するお客様の心理動向については、前回の記事に詳しいので、以下のリンクをご確認ください。

【刺激的なプロモーションに頼る商売から脱却しよう】

短絡的な安売りで失う「価値」

このような事態に陥る原因は、一時的な売り上げ欲しさにその場しのぎの低価格戦略に走ったはいいが、プロモーション後のリバウンドを一切想定していなかったという事です。そして何より問題なのは、プロモーション専用の商品を安くするのではなく基幹商品を安く売り続けたせいで、本来あったはずの商品価値そのものを下げてしまった事です。今まで牛丼の並は一杯400円だと消費者が認識していたのを、売り手自らの手で一杯280円が相場だと刷り込んでしまった事が、その後の売り上げや利益回復の強力な足かせとなっているんです。

価格が安いというのは消費者にとっては大変な魅力ですよね。しかし、本来その値段では手に入らないものが、お値打ち価格で売り出されるというギャップにこそ、ディスカウントの価値が存在します。ドンキホーテなどのディスカウントストアは、メーカー希望小売価格が存在する商品を企業努力で安く販売していますので、安売りを続けても企業価値も売ってる商品の認識価値も変わる事がありません。しかし、自社商品の安売りをしている企業は、商品そのものや企業ブランドの価値まで下げてしまうリスクがあるという事です。

商品を安く調達出来れば安売りは出来ます、調達出来なくても安くすればその分お客様が増えてペイ出来る可能性もあります。しかし、永く商売を続けるのであれば、ディスカウント期間が終わった後の状況も充分に想定して取り組みましょう。安易な安売りで手っ取り早くキャッシュを手にするのと引き換えにお客様の寿命を縮めるくらいなら、価格以外のウリを探し、多少の時間はかかっても、それを磨き上げ差別化する事でお客様に選ばれるほうが商売としては健全です。

この薬は打つと即効で元気になるけど、切れたら前よりグッタリしてきます。ヤバイと思ってもう一度打つと、元気にはなるけど前ほどは効かず持続もしない。身体が徐々に弱っていくのを感じるけれど、他に元気になる方法も浮かばないので、とりあえずその日グッタリして見えないようにする為だけに薬を打ち続ける。この薬こそが無計画な安売りの正体。

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