商売は『SHOW BUY』 -お客様の「買い物体験」は、日常のエンターテイメントだ!-

どもっ!商売力養成コンサルタントの福谷です。

 

これまでにも何度かここで書いていますが、お客様が商品を買う「買い物」という行為は、ただ単に物品やサービスへの対価としてお金を払っているわけではありません。

たとえば、日本中どこにでも売ってる1000円の既製品は、一般的に1000円の価値があると認識されています。

ですので、私たちはその商品を手に入れる為に1000円を支払います。

1000円の商品を買って1000円札を出す、買い物を商品とお金の対価交換だと考えれば、これが「買い物」という行為の「すべて」であり、「買い物」という行為の「当たり前」であるはずです。

合理性も加味して考えると、同じ金額の同じ商品が日本中に売っていれば、家から一番近いか通勤途中など、最も買いやすいお店で延々と買い続けるはずです。

 

ところが、実際はちょっと違いますよね。

よく似た商圏にある複数のお店が、完全に同じ既製品を同じ価格で販売していても、よく売れるお店と、たいして売れないお店に分かれてしまいます。

これは私たちを含むお客様が、商品と代金の交換が買い物行為のすべて「ではない」と認識しているからです。

だから最初から行かないお店もあれば、一回言ったら二度と行かないお店もあるし、友達まで連れて毎週通い詰めるお店もあるわけです。

商品と代金の交換が買い物という行動のすべてなら、途中から行かなくなるお店なんて本来は存在しないはずなんですよね。

お客様に買い物を止めさせる「何か」が、逆に足しげく通い詰めるくらいの「何か」が、その時お店では起こっているということです。

 

では、お客様にとっての本当の「買い物」とは何なんでしょうか。

私たちを含むすべての消費者は、いったい何に対してお金を払っているのでしょうか。

 

お客様の「買い物満足度」は、価格以外の何で測定されるのか

私たちは買い物を、入店から退店までに目の前で起こること、自身が見聞きすること、五感で感じること「すべてに対しての代金」としてお金を払っています。

ですので、本来なら1000円の価値がある商品に、1000円の現金を支払って帰るだけであるはずの「買い物」なのに、とても素敵な接客を受けて気分よく1000円を払えば「次もここに来よう」となりますし、ひどい接客を受ければ「二度と来るか、ボケ!」となるわけですね。

商品以外の印象が良いと1000円を払っても「安い」と感じ、商品以外の印象が悪いと1000円が「高い」と感じるということです。

 

どんな場所にある、どんな外観で、どんなインテリアのお店に入り、どんなスタッフから、どんな接客サービスを受け、どんな陳列をされた商品を、どんな会話をしながら買うことを決め、どんなふうにお金を払い、どんなふうに商品を受け取り、どんな感じで店を後にするのか。

単に商品と金銭の交換ではなく、買い物という一連の行為を通して様々な体験・体感をする「買い物体験」と言えるもの、これが本当の「買い物」の姿なんですね。

支払ったお金に対しての総合的な「買い物体験」の満足度で「高い・安い」や「また来る・もう来ない」が決まるということです。

 

「商売なんて、モノ売ったらええんとちゃうのん!?」

って考えている人にとっては、かなりメンド臭い事実だと思います。

仕入れた商品と現金を交換するという商売の最低要件だけでは、少なくとも一度買ったお客様がリピーターにつながる皮算用は、一切出来ないという厳しい現実がそこにはあります。

 

しかし逆に、お客様が気持ちよく、快適に、楽しく商品を購入さえできれば「買い物体験」としての価値は上るのだと考えると、見えてくるものがあるのではないでしょうか。

そのお店でしか手に入らないオンリーワン商品や、赤字覚悟の目玉商品を用意しなくても、そのお店でしか手に入らない「買い物体験」を提供できれば、お客様はそのお店で買うことに価値を見出してくれるということです。

よく似た商圏にある複数のお店が、完全に同じ既製品を同じ価格で販売していても、そのお店は「よく売れるお店側」の立場に立てるチャンスがあるわけですね。

 

売り場は『舞台』であり『アトラクション』であり『エンターテイメント』でもある

お客様の「買い物体験」を充実させたいからと言って、毎度毎度ハンカチから鳩を出してビックリさせるわけにはいきませんよね。

そりゃ実現すれば楽しいかもしれませんが(笑)あまりにも非現実的です。

 

現実には、お客様が入店してから退店するまでの間に、少しずつ「小さな好印象」が積み重なるような「おもてなし」を行う以外にはありません。

エクステリア、インテリア、小物や空調も含めた設備や、スタッフの外見や立ち居振る舞いを含めたソフト面などを細かく見直すことが求められます。

 

・それは、メーカー支給のPOPを外して手作りすることかもしれませんし、空調の温度管理にルールを設けることかもしれません。

・それは、お待ち頂く為にふかふかのソファーを用意することかもしれませんし、商品が揃った時にお客様を呼ぶのではなくお待ちの席までスタッフがお届けすることかもしれません。

・それは、挨拶する時にはすべての作業を一旦中止しておじぎをすることかもしれませんし、二回目以降のリピーターさんには必ず前回のお礼を伝えることかもしれません。

 

このように設備を変えたり、ルールを設けたりするだけで、お店の印象は大きく変わっていきます。

大げさに聞こえるかもしれませんが、商品と現金の交換の場だったお店が、買い物というアトラクションを体験する場へと変化していきます。

お客様に「ご機嫌な買い物体験」をして頂くという着地点で、設備や店内ルール、従業員の立ち居振る舞いを突き詰めていくと、お店はもはや『舞台』であり『アトラクション』であり、『エンターテイメント』だと言っても過言ではないでしょう。

「お客様を喜ばせる」というシナリオの細部をブラッシュアップし、ショーアップさせるという意識でお店を捉えれば、見えてくるものはたくさんありますよね。

「お店」というステージに「設備」という舞台装置があり、演者として「スタッフ」がいるのであれば、お客様からカーテンコールをもらう為にしなきゃならないコト、お客様からカーテンコールをもらう為にしちゃいけないコトがわかってくるはずです。

 

たとえば、入りたての新人さんに充分なトレーニングもせず、半分度胸試しのような感覚でお客様の注文を受けさせるようなお店に出くわすことがあると思います。

これって、実は「芝居も知らない劇団員に主役をやらせてる」のと同じ状況なんですよね。

カミカミの台詞だけならまだしも、棒読みされたり台詞が飛んだり、全体の流れも理解していないから突然舞台そでに消えたり素の顔に戻ったり、しかも黒子というサポートすらついていない舞台。

「誰がそんな舞台をまた観たいと思うねん!?」

って話ですよホンマに(笑)

頑張る新人さんを初々しいと好意的に見てくれる、タニマチのようなお客様もいらっしゃいますが、それは既にお店のファンになっているか、お客様ご自身が接客業経験者で内部事情を知っているから「可哀そうに」と大目に見てくれているだけで、ひとりで立てない新人を放置させているお店に対しての印象が良くなることなどあり得ません。

 

お店の勝手な理屈、勝手な都合で半ば当たり前のように横行していることでも、お客様の買い物体験という視点で見れば、実はとんでもないマイナス要因であることも少なくないんです。

『舞台』でも『アトラクション』でも『エンターテイメント』でも、例えは何でもいいのですが、「ご機嫌な買い物体験」というお客様視点でお店のオペレーションを見直すことは、このような「間違った仕組み」の存在に気付くチャンスだと考えるだけでも意味のあることだと言えるでしょう。

 

接客やおもてなしは、売り手が「何をしたか」ではなく、お客様が「どう感じたか」がすべて

私の好きな言葉に『SHOW MUST GO ON.』というのがあります。

「ショーは、たとえ何が起こっても続けなければならない」という意味(だろうと勝手に思ってる)で、プロフェッショナリズムについて考える時に、必ず私の頭の中に浮かんでくるフレーズになっています。

また、SHOWのつく言葉で、もうひとつ私が好きなものがあります。

『商売は、SHOW BUY』

これは、好きも何も私が勝手に気に入って当て字にしてるだけの造語で(笑)決して「クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!」のパクりではないとだけお伝えしておきますが、どちらの言葉もお客様にショーを観せる、ショーを演じると考えた場合、演者である私たちには「ある基準」があることがわかります。

それは、「やっかた、やらないか」という行動の基準ではなく、その行動を受け取ったお客様の印象や感情が基準になる、という点です。

役者さんが台詞を間違わずに言ったという行動や、売り手が決まり通りの接客としたという行動ではなく、観客や買い手であるお客様がそれを受けてどう感じ、どういう印象を持ったかがすべてであり、それが私たちの活動の起点でもあるということです。

お金を払って劇場に来るお客様は、芝居のストーリーが知りたいのではなく、いいお芝居だったと感動したからですよね。

私たちの商売だって同じなんです、商品というブツが欲しいんじゃなく、いい買い物したな、いい時間を過ごしたなって思えたから、またあなたから買いたいと思うわけです。

 

接客やおもてなしを「演技」だと言うと、嘘くさいとか心がこもっていないとか感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、「お客様が喜ぶように立ち居ふるまう」というルールを売り手が実践することは、心を込める云々の精神論以前に、ショーに参加する誰もが最低限しなければならない、極めてベーシックな仕事だということです。

お客様が受け取る感情や印象を起点にステージで演じるのは売り手の義務です、いらっしゃいませと正しく言えたかどうかなんて、お客様には何の価値もないんです。

 

結局ね、いろんな意味でプロにお金を払いたいんですよ、私たち消費者は。

あなたのお店は、プロとして魅せる買い物体験をお客様に提供できているでしょうか。