「経験者募集・経験者優遇」の採用活動で、理想の人材が集まらない理由

どもっ!商売力養成コンサルタントの福谷です。

 

中途採用の正社員や、アルバイト・パートさんの募集をする際に、少しでも即戦力に近い人材を確保したいという考えから、募集要項に「経験者優遇します」という文言を掲載する事業所は多いと思います。

まったくの素人、未経験者を雇うとイチから教えるという作業が必要になる為、過去に同業他社での実務を経験していたり、同業種に身をおいていたと言う経験は、トレーニングにかかる時間や手間を省略できることから重宝される傾向にあります。

 

確かにありがたいんですよね~、イチから教える必要がナイっていうのは。

業界のことを理解しているだけでも「話が早い!」って思うコト、実際にたくさんあります。

たとえばお店商売だったら、接客経験があるってだけでも何とかなりそうな気がしますよね(笑)

 

しかし、それって本当に効率的、つまり狙った通りに短期間で望んだ人材が確保出来ているのでしょうか。

組織の採否基準が、より経験豊富な人材を確保したいという意識に偏重することで、結果的に未経験者を教育するよりも時間がかかる可能性があることをご存知でしょうか。

「経験者募集・経験者優遇」と求人媒体に謳うことで、「経験はないけど適性の高い人材」を採り逃がしている可能性はありませんか?

 

SPIでは決してわからない! 仕事への適性とはいったい何なのか

そもそも、適性とは何でしょう。

大辞林によると、「ある事に適している性質や能力。また、そのような素質・性格。」とあります。

ビジネスで置き換えると、「その仕事」を成し遂げるのに適した性質、能力、素質、性格などの「素養」と言っていいでしょう。

そして、この場合の「その仕事」とは、漠然とした職種や最低限の作業・業務を指すのではなく、あなたがスタッフに望む「理想の働きぶり」を指します。

 

これはどういうことかと言いますと、もしあなたが雑貨店スタッフを雇いたいと思うのであれば、「いらっしゃいませ」が言えて、レジを打てて、雑貨の品だしが出来る……、だけで満足なわけないですよね(笑)

スタッフが生き生きと活躍することでお客様が満足し、お店のファンが増えていくことを望む経営者であれば、お客様や他のスタッフに寄り添えるやさしい心や気配りが出来る人だったり、商品への愛情が感じられたり、人当たりがよかったり、基本的な礼儀作法や言葉遣いが備わっていたり、コミュニケーション能力が高かったり、笑顔がよかったり、責任感が強かったり、何に対しても姿勢が前向きだったり……、こんな人材を採用したいと思うはずです。

このような素養を持った人材が、あなたがお店を運営するにあたっての想いや、目指すビジョンに共感することで、初めて「理想の働きぶり」が実現するような気がしませんか?

 

経験者の採用が、人材教育の時間短縮にはならない理由

まずシンプルに考えてみて欲しいのですが、誰かに雑貨店の業務を一通り教えるのにかかる時間と、誰かの性質や性格を、あなたが考える「理想の働きぶり」を実践してくれそうなレベルに矯正するのにかかる時間、どちらが長いでしょうか。

もちろん後者ですよね、人によってはまったく新しい価値観を教育する必要も出てくるでしょうし、そもそも生まれ持った性質を変えられるのかという問題もありますから、相当な時間と手間を覚悟する必要があります。

ですので、雇ったスタッフが「理想の働きぶり」を実現するまでを、費やす時間の短い順に並べるとこうなります。

①適性があり、経験もある
②適性があり、経験はない
③適性がなく、経験がある
④適性がなく、経験もない

時短の為に「経験者募集・経験者優遇」と記載して求人しているはずなのに、実際にはそういう順番には並んでないんですね。

「経験者優遇」と書くよりも「適性者優遇」と書いたほうが、ゴールは早い可能性があると(笑)

 

あなたの会社やお店の求人には、本当に「経験者募集・経験者優遇」の一言が必要ですか?

さて、ここまで読むと異論も出てくるのではないかと思います。

「うちが求人で『経験者優遇』と書いてるのは、あくまでも面接や適性検査で素養を重視して、その上で経験者は優遇しますよ、という意味なんです」と。

確かにそうだと思います。

経験者だからって、誰でもカレでも採用するわけではないでしょう。

 

しかし、実際には応募者の中で最も高い適性を示すふたりのうち経験者の方を採用した、というシチュエーションだけでは無いのではありませんか?

過去に採用した経験者の中に、実は「経験者でなければ採用していなかった」と感じていたスタッフ、要するに適性だけでは採用していなかった人材がいるのではないでしょうか?

あくまでもオプションだったはずの「経験者優遇」が、最終的に選考基準の中心に据えられていたことはないでしょうか。

 

また、「経験者優遇」と表記することで、「経験者しか採用してもらえないのかな」と求職者が勝手に解釈して、適性者が応募してくる可能性の芽をを摘んでしまっていることも無視できません。

「経験者優遇」と表記してしまうことで、採用したらタケノコのようにグイグイ頭角を現すはずの適性者が面接にすら来ないのだとしたら、ずいぶんな機会損失です。

組織側は実際に経験をさほど重要視していなかったとしても、求人票を見る立場にとっては「経験者優遇」の一言は非常に重い意味を持ちます。

求人票を見た求職者が「仕事に興味はあるけど、経験者じゃないからきっと採用されないな」と考えるのは当たり前のことで、それでも応募してくる未経験の求職者は、情熱と高いポテンシャルを持つ人よりも、求人票すらちゃんと読んでいない困った人の方がはるかに多いはずです(経験談 笑)

少なくとも「経験者優遇」という言葉は、この業種にチャレンジしたいという想いを蹴散らし、磨けば光る原石や金の卵を遠ざける、強烈なオーラを放っていることは間違いありません。

 

経験者を募集・優遇して求人するメリットは何ひとつ無い!

もちろん、ひとくくりに経験者を募集するといっても、職種によっては本当に未経験では如何ともしがたい仕事もあるでしょう。

専門性が高く、深い造詣や知識が必要だったり、一人前の技術を習得するまでに非常に長い年月がかかったり、前任者の退職で急に一定レベル以上の人材が必要となった場合なら仕方ないかもしれません。

しかし、わずか1~2年、職種によっては数ヶ月で最低限のことは身につくレベルの経験を、あえて「経験者募集・経験者優遇」として募集をかけるメリットは、正直なところ「何ひとつとして無い」のではないかと、私自身は感じています。

 

まず、「経験者優遇」なんて書かなくても、経験者は勝手に集まります(笑)

求人票に何も書かなくても、過去の経験を生かして次の仕事を決めたいという人材は山ほどいます。

求人票に「経験者優遇」と書かなくても集まる人と書いて集まる人の違いは、「優遇」されたいと思っているかどうかだけの違いです(笑)

 

次に、経験者が未経験者より優秀だったり高い適性の持ち主である理由は、これも正直なところ「何ひとつとして無い」と言えます。

多少なりとも実務の経験があるという情報だけでは、彼らの「本当の働きぶり」は前職の状況を知らない私たちには判断のしようがないわけですね。

残念ながら、どこかの職場に引っかかりたいという切実な思いで就活を行う人間は、少しの経験でも過大に吹聴して、しかも自信満々にエントリーします。

「5年やってました!」って胸張ってた人を採用してみたら「5年やってソレなの?」って仕事ぶりの人なんて(笑)捨てるほどエントリーしてきます。

結局、「人となり」を見る必要があるんですよね、経験者という色眼鏡を外して。

 

また、今までに一度は職場で見聞きしたことがあると思いますが、経験重視で採用された人材には、彼ら独特の問題が発生します。

・前職での「クセ」を現場に持ち込む
・前職での経験を偏重し、現在の職場との違いを受け入れない
・経験者であることを本人が過大評価してしまい、人間関係を悪化させる

実はこれ、面接官の人を見る目だけでクリアできる問題ではありません。

経験が買われて採用に至ったという自負や、経験者がやってくることに対して既存スタッフが抱く期待や不安と実際のギャップなど、様々な要因で生まれる現象なんですね。

 

人材の採用基準は「適性」一択でOK! いい人材を見つけ、自ら育てよう!

根本的な問題でいえば、何年も事業を続けているにもかかわらず、経験者を優先採用しなくてはならない組織の状態を憂うべきでしょう。

スタッフの経験を組織内にノウハウとして蓄積する仕組みを持たないが為に、または人が長く続かない職場環境を放置している為に、いつまで経っても外部から経験者の流入を期待してしまうわけです。

 

「経験者募集・経験者優遇」と謳わなくてよくなる最良の方法は、先人の経験を組織にノウハウとして残すこと、人を育てる組織風土を構築することに他なりません。

何をどのように、何を使って教えればいいのかが明確であれば、教育は決してハードルの高い障害ではありません。

適性だけにフォーカスし、適性の高い人材に効率的なトレーニングを行えば、最短で最高のスタッフは必ず育ちます。

 

適性にフォーカスした採用活動を行いましょう!

どんな経験者にだって、最初に彼らを育てた「どこか」があるということを忘れないでください。

まずは、あなたが望む「理想の働きぶり」を実践してくれそうな「いい人材」を採用する、その中の何人かが、たまたま前職で「いい経験」をしていればラッキー、それくらいのスタンスでいいのではないでしょうか。