プロセスを評価する仕組みを持とう

事業規模が大きくなるに伴い、長期的な視野に立って利益を追求していた創業時の姿勢が、いつの間にか目先の売上を追い求めるようになるという、体質変化を起こす組織があります。このような、組織の動脈硬化とも言える現象を引き起こす原因の中のひとつに、実力評価主義という名目で導入される、従業員に対する不完全な人事考課制度があります。

 

はじめに賞与査定ありきの評価制度

人事考課制度は、上司と部下が一定期間ごとにいくつかの職務カテゴリでの活動目標を数値で設定合意し、目標達成の度合いによって評価を行なう制度です。時代が終身雇用から実力主義へとシフトしていく過程で広まり、今では企業規模を問わず多くの中小企業でも採用されている評価制度となっています。

従来型の年功序列や評価者の主観に頼る不透明な評価ではなく、客観的な数値目標に対しての評価がなされるという事で、実力評価主義の風潮もあり世間に広まったのですが、私が問題だと感じているのは、その目標の多くが「半年」という期限で設定されているという点です。

会社の決算の都合や、人事評価をボーナス査定に反映させる為というのが、目標管理が半年設定で行なわれる主な理由ですが、「ヒト・モノ・カネ」の全てにおいての目標と評価を、一律に半年区切りで判断する事には、かなりの無理があります。

 

永続する商売と評価制度の、埋められないギャップ

商売は長期戦ですよね。海の家みたいな営業形態は極めて稀で、多くの企業は期間限定で売り逃げるのではなく、長期間売り続ける為の商売を構築しなくてはなりません。三年後、五年後、十年後を具体的にイメージし、お客様を増やしていく為のアクションを、日々の活動に落とし込んでいくからこそ、商売は生涯の活動になり得るわけです。

ところが現在の評価制度では「ではこれからの半年、あなたはどんな活動をしますか?」という問い掛けが起点となります。一見するとやさしい問い掛けですが、これは事実上「半年で結果が数値化出来るモノは何ですか?」というリストアップです。半年間で数値化出来る目標じゃないと、目標の候補にすら入らなくなるという事を意味します。

この評価制度が動き出すと、評価される対象の社員は、評価対象となる全ての仕事を半年という短期でしか見なくなる傾向が表れます。三年後の利益、五年後の繁栄を起点に行動を考える習慣がなくなります。もちろん評価する側の上司も、同様の価値観で評価しますので、三年後の利益や五年後の繁栄の為に、今期と来期は投資としてマイナスを覚悟するという発想が出来なくなります。

 

短絡的な業績目標設定が引き起こす弊害

長期的な視点に立った利益の追求が誰にも求められなくなると、キッカリ半年という短期スパンでウソでも数字が獲れる、短絡的な営業活動に走らざるを得ない状況が生まれます。

例えば、店舗社員やアルバイトを巻き込んで「お客様を心からおもてなし出来る体制を二年かけて築き上げよう!」などという長期プランや、途中経過を測定しにくい「ぼんやりとした目標」は避けられるようになります。そしてその代わりに、クーポン券を大量投入して目先の売上を出して見せる、というような手法が採られだします。

これは、人事考課制度そのものに問題があるのではなく、それを運用する企業側が用意する評価基準の問題です。半年で1ポイントでも数値が向上すれば、誰が見ても成果が出たという判断を行ないますが、半年後では一時的にマイナスになる可能性がある長期案件を、正しく評価するルールを用意しないまま、さして権限もない中間管理職に末端社員を評価させようとします。

その結果、現場は誰が見ても判り易い、半年後に何かしらの数値が上がる目標を設定しようとします。組織の成長にとってベストな選択でない事は自覚していますが、半年で達成して見える数値目標を設定しないと、自らの査定に影響するからです。長期プロジェクトや組織のビジョンへの取り組みを、短期で評価する仕組みを会社が用意していない為に起こる弊害と言えるでしょう。

 

組織の成長と人材の成長を比例させる為に

社員の業績管理に数値目標を採用するのであれば、半年後がゴールとなる目標だけではなく、中期・長期のスパンで目標の進捗を見て、数値に出ない場合はプロセスの正しさで評価出来るような仕組みを用意しましょう。せっかく社員を正しく評価し、全体の生産性を高める為に導入した考課制度なのに、その結果として長期スパンで組織の繁栄を考える事が出来ない人材を育成してるのだとしたら、それって本末転倒も甚だしいですよね。