競合他社との差別化は、まず既成概念の払拭から

事業主やサラリーマンはもちろん、商品の製造のみに携わる工員や、一見ビジネスとは縁遠い芸術家でさえも、事実上は何かしらの商品を売って生計を立てています。 売る為に行われている販促活動も多岐にわたり、チラシや看板、バナー広告や口コミまで、持てる知識と使える予算の全てを投入し、考え抜いたキャッチコピーでお客様を扇動します。 さて、これらの商品は販促メディアが持つポテンシャルを最大限に発揮して、売り上げに貢献しているのでしょうか。売り手が売れたか否かを判断する根拠は何でしょう。そこには必ず判断基準となるものがあるはずです。

 

業界の慣例を基準にする事のリスク

例えば、チラシを新聞に折り込んで商品を宣伝したとします。 数日後にはどのくらいの反応があって、更にその内のどのくらいが購入に結びついたかという結果が出ますよね。「今回は売れたよなぁ」 広告主がこういう感想を持つに至るのは、以下のような根拠があります。

・前回広告を折り込んだ時よりは売れた
・この業界での広告反応率の相場を考えると、今回は売れた方だ
・広告費を使っても利益が出たので、結果的には売れたと判断出来る

前回の実績や業界内での相場実績は、こうした判断基準としてよく用いられます。一見すると、さも客観的に現実を見つめ分析しているかのように聞こえますが、実はこれらの指標は非常にいい加減なモノです。何故なら、業界内でのセオリーや慣例に則って広告宣伝を行なう事自体が、広告の反応を頭打ちにしているという現実があるからです。

そもそも、最大限に広告効果が発揮されたというのは、どのような状態でしょう。何やかんや言っても、儲かって利益もたっぷり出ているのなら問題はないんです。しかし、コストは1円も無駄に出来ないという小資本事業者の感覚で言えば、広告の成否は死活問題です。同じコストと手間をかけるのであれば、広告効果は極限まで引き上げたいと誰でも思います。単純に販促活動に対するお客様の反応が2倍になったら、商売はどれだけ楽に回るようになるでしょう。

広告のレイアウトやキャッチコピーは、同業他社の中では王道と言われるくらい良くできたモノにした。有名コンサルタントが書いた本を読んで、最新のマーケティングを取り入れた。なのに何故その効果が最大だと言えないのでしょう。それは、業界でベストだと認識されている方法は、お客様の視点からはベストでは無いからです。販売者個々が、どんなに正しいとされているマーケティングを仕掛けても、結果的に同業者が似たり寄ったりの戦略を採っていれば、それを見せられる商圏内のお客様にとっては「どこの業者もおんなじ」にしか見えないからです。

 

市場の環境で変わる「見え方」

何かを売るために仕掛ける販促物には、必ず定石やブームと言われるものがあります。 昔から業界の習慣や慣例として存在するものもあれば、最新のマーケティング理論に則ったものまで様々です。 例えば、以下のような例は定石の典型かもしれません。

・大衆的な食べ物屋の看板に使う色は、赤と黄色が食欲をそそるので好ましい。
・カラーチラシは豪華で、白黒のチラシは貧相な印象を与える。
・大きく、太い書体を使うと目立つ。

上記の三例はすべて正しいです、間違ってはいません。 しかし、同業他社も等しく同じ情報を得て実践しています。ほとんどの飲食店は赤と黄色を基調にした暖色の看板ですし、ほとんどのチラシはカラーです、ほとんどのスーパーの特売価格の文字は恐ろしく太くてデカいです。理論に則って頭の中で考える本来の望むべき訴求効果が、実際のフィールドでは想定した程の効果が発揮されていません。

もし濃い青系などの、寒色を多用した看板だらけのうすら寒い飲食店街に、赤と黄色を基調にした暖色系の看板でラーメン屋を一店だけ出せば、味はともかく看板としては最大限に効果が発揮されるでしょう。しかし、実際には寒色を使った飲食店の看板は非常に少ないはずです。 何故なら、どの店の経営者も、寒色の看板は食欲をそそらないからダメだと知っているからです。「飲食店なら赤とか黄色の暖色系を使うよね」と思っているからです。暖色だらけの看板の中に、また一つ暖色の看板が増えた、その程度の視認性でしかないわけです。

販売理論や戦略がどんなに優れていて、その結果として素晴らしい集客アイテムが完成したとしても、それがその業界での常識の範囲内だったり、競合他社も同じ事をしているのなら、お客様の目には「その他大勢」でしかありません。この売り手と買い手の感覚のズレが、大きなコストロスを生んでいる原因です。たとえ世界で初めて実証された最新かつ強力なマーケティング手法が発見されたとしても、それが広まり本になって、みんなが模倣を始めて市場に投入した時点で、その本に書かれているような優れた効果は期待出来ない環境になるわけです。

この事実は、自社の戦略がどういう環境の中でお客様の目に留まっているのかをチェックし、常に目新しく映るようにマイナーチェンジを施していかなくては、本来狙った販促効果は得られないという事を意味します。事業主それぞれが実践している集客方法・顧客獲得方法が、常に最大の効果を生み出し続ける事が出来るよう、消費者の目線からの見え方を元にチューニングする必要があるわけです。

 

消費者と事業者の目線のズレを補正しよう

世界で唯一のイノベーション商品でも扱っていない限り、お客様は「同業他社とは違う」という比較によってのみ、商品サービスの存在を認識します。見込み客の発掘からリピーターの育成までの流れの中で、並み居る競合他社とのちょっとした差別化を積み重ねる事で、積算的にその効果を引き上げる事が可能です。

消費者の目線と事業者の目線の感覚のズレに気付き、それを補正する事で本来の売る効果を取り戻す事が出来ます。これは集客や販促に留まらず、商品そのものや接客サービスにおいても同様です。小さな違いを印象差として積み重ねる事で、やがて競合他社との圧倒的な違いを生み出すまでに至ります。まずは、お客様の目に商売がどのように映っているのか興味を持ちましょう。