働き方改革で人手不足倒産は防げない -求人採用の前に社内風土を改革しよう-

働き方改革で人手不足倒産は防げない

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人手不足による倒産が増えています。政府が掲げる「働き方改革」だけで、この事態を回避できるのでしょうか。

目次

他人事ではない人手不足倒産

帝国データバンクが7月10日に発表した『「人手不足倒産」の動向調査(2013年1月~2017年6月)』によると、2017年上半期に人手不足が原因で倒産した企業は、前年同期比44%増の49件、倒産企業の負債総額においては、前年同期の5倍強となる218億円に達しています。

『業種別では、4年半累計で「建設業」(105件、36.2%)がトップ。「サービス業」(92件、31.7%)も多く、この2業種で全体の7割弱を占めた。(中略)帝国データバンクは「このまま若年層を中心に人口の減少が進めば、企業の人手不足はさらに深刻化する恐れがある。今後、人手不足を理由に計画通りの売上高を確保できない企業や、人件費上昇分を転嫁できずに収益が圧迫される企業が増えることで、さらなる人手不足倒産の増加が懸念される」と警鐘を鳴らしている。
ITmediaビジネスオンライン 「人手不足」による倒産、17年上半期は大幅増の49件 2017/07/10』

負債規模別の件数では、調査期間累計の最多は1億円未満が構成比の47.2%、1~5億円未満が40.3%と小規模企業の倒産が目立つ一方で、直近の2017年上半期では10億円以上の負債も5件発生しています。これは事業規模を問わず、どの企業でも起こり得る問題に拡大していることを意味します。事業の仕組み上、多数の従業員を必要とする業種にとっては他人事ではない、極めて深刻な問題だといえます。

採用活動に注力することの限界

人手不足には様々な原因があります。少子化や高齢化などによる労働力人口の減少という構造的な課題はもちろん、景気回復による就労者に対するニーズの拡大や、雇用のミスマッチで起こる離職などが該当します。

労働力人口の減少による採用難に対しては、すでに多くの企業が危機感を募らせ、様々な施策がニュースにもなっています。この数ヶ月の間でも、ヤマト運輸や佐川急便が週休3日制の導入を発表したり、イオンが引越しを伴わない地域限定の新卒採用を発表したりと、働きやすさをアピールする企業の動きがメディアを賑わしています。大手でなくとも、実際に採用活動で必要な人材を確保できなかった経験を持つ企業は、募集給与や福利厚生など待遇の見直しを行っているでしょう。

しかし、人手不足を解消する為に行うこれらの施策の多くには、最初から限界が見えています。たとえば週休3日制を導入するには、休ませた分の作業を行う人材が必要になります。それは勤務日となる残り4日間の勤務時間を延長して割り当てるか、いま以上のペースで従業員を採用する以外に解決方法がありません。前者の場合は、休日こそ増えても総労働時間は変わりませんし、後者の場合は、人手不足にも関わらず現状以上の人材が確保できるのかという根本的な問題が残されます。

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募集給与を上げるにしても、同業他社の2倍も出せるわけではありませんので、特に中小企業では、他社の出方を見ながら見劣りしない程度に引き上げるのが関の山でしょう。給与や福利厚生での待遇競争は、最終的に資本力の勝負となりますので、中小企業が大手に勝てる見込みはほとんどありません。この構図は、企業が商品の安売り競争をするのとまったく同じもので、そもそもが大手企業しか勝てない仕組みになっているわけです。

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大手企業のようなネームバリューも資本力もない中小企業が、人材確保の為にまず着手しなければならないのは、採用の強化ではなく既存従業員の離職防止です。事業規模の拡大を除いて、人手不足が起こるのは、単純に入る以上のペースで人が出ていくからです。出ていく以上のペースで人を入れる前に、まず出ていく人数を減らさないと、人手不足倒産は現実のものになり得ます。穴の開いたバケツに水を入れ続ける前に、まずバケツに開いた穴を塞いで水が減らないようにすることが、最も効率のよい人材確保の方法だと言えるでしょう。

それにはまず、退職する人たちの「本当の理由」を探り、組織がその理由から目を背けることなく対峙し、ひとつひとつ潰していくことが求められます。退職希望者への退職面談はもちろん、既存従業員に対しても徹底した聞き取りを行い、辞めたくなる理由を浮き彫りにすることが、その第一歩となるでしょう。

離職率の高い企業には、退職する人間を離脱者や落ちこぼれとして認識し、退職原因と正面から向き合わないという、やっかいな傾向があります。優秀な人材をふるいがけで選ぶような、買い手市場だった頃の前時代的な認識のままでは、人手不足は永遠に解消されませんし、離職が止まろうはずもありません。人手が足りずに倒産が起こるのであれば、間違いなく従業員は組織の財産です。彼らが退職したいと思わない組織風土を作ることが、採用活動の最優先課題であることは間違いありません。

もちろん業務の合理化や機械化、アウトソーシングなど必要な人数を減らす為の試みや、アルバイトやパートタイム、高齢者でも垣根なく採用の間口を広げられる雇い方の改革も並行して行われるべきですが、これらもすべて従業員が退職したいと思わない組織風土の上に成り立つからこそ、有効に機能すると考えるべきでしょう。

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