なぜ人材の採用基準を下げると、従業員の定着率まで低下するのか

どもっ!商売力養成コンサルタントの福谷です。

 

先日、私の知る企業が大手転職サイトを使って、中途入社の求人採用を行いました。

採用予定1~2名に対して、100人を超える応募者があったそうです、スゴいですよね。

で、エントリーした方々の職務経歴書も拝見させて頂いたのですが、事前に「採りたい人材」を伺っていた私は、正直ちょっとビックリしてしまいました。

 

面接希望者は多いのに、適正な人材が集まらない不思議

まず最初に、職務経歴書をめくりながら何を思ったかというと、

「なんでこんな人たちが、わんさかエントリーしてるん?」

という疑問でした。

 

事前に伺っていた話では、ある知識を生かした実務経験が必須だったんです、採用条件として。

ところがですね、職務経歴に目を通してみると、その経験がある人が半分チョイくらいしかいないんですよね。

残りの人は……、もうね、なんだかよくわかんない(笑)

「やったコトないけど頑張ります!」みたいなね、何なら「オレ、やってみたいッス!ウォ~~~~!!」的な感じなのかなって人たち。

そのくらい採用条件から遠いんです。

 

業種や条件によってピンキリだとは思うんですが、求人広告を出して100人超の応募があるというのは、決して反応としては悪くない。むしろ良過ぎるくらいです。

採用予定1~2名に対して100人超という人数だけを考えると

「あ~ん決めらんなぁ~い!あの人はカッコイイし、この人はやさしいし、その人はリッチそう、誰と付き合うかキョジ子(恭治子 仮名)迷っちゃう!」

くらいに贅沢な買い手市場なんです(笑)さぞステキな殿方と結ばれるんでしょうな、ゲッシッシ!くらいの。

ところが、実際はそうじゃなかったんですよね。

欲しい人材が100人集まっているなら、選考もうれしい悩みでパラダイスだったんでしょうが、実際は、書類選考の時点で不採用メールを送るのに大忙しだったそうです。

 

表現のニュアンスひとつで、面接希望者の質は激変する

なぜこのようなことが起こってしまったのか。

募集ページの原稿を見てわかりました。

 

「実務経験のある方!」と、ちゃんと明記はしてあったんです。

しかし、次の行に

「ヤル気のある方、応援します!」

という言葉があったんですね。

 

実は求人サイトの原稿って、企業がイチから文章を起こして渡すケースは少ないんです。

たいてい求人サイトの担当者が採用担当者に簡単なヒアリングをし、誌面原稿を作ってにクライアントに確認してもらう、という流れが一般的。

今回もその流れだったようなんですが、企業側の採用担当者は「実務経験のある人の中でも、ヤル気のあるを優遇します」というつもりで喋っていたようなんです。

ところが出来あがった原稿は、まるで実務経験が無くてもヤル気があればオッケー的なニュアンスになっている。

採用担当者も、頭の中に「実務経験のある人の中でも、ヤル気のあるを優遇します」と言った記憶があったので、思い込みでそう書かれているように読めたらしいんですね。

 

怖いのは、「オレ、やるッス!」みたいなエントリーが続く状況に、途中で「アレっ?おかしいぞ」という疑問すら浮かばなかったことです。

どっちかというと、喜んでるんですよね(笑)反応がたくさんあったことに。

いっぱいエントリーが来て、高額の募集費もムダにならなかったという喜びなのか、ウチの会社に入りたいという人間の多さに気をよくしているのか、とにかく採用される可能性の低い応募者の面接に時間を取られることや、大量の不採用通知を送るのに取られる手間について、本気で嫌がっている感じではないんです、「いやぁ~忙しくてまいっちゃうよホント」って言いながらまんざらでもナイ、みたいな。

それでも結果的に最高の人材が確保できているのなら問題はないのかもしれません。

しかし、今回の募集で採用となった人は、少なくとも『望んだ通りの人材』ではナイそうなんです。

「あんまりピンとくる人がいなかったんですよね」らしいです(笑)

考えられます? 100人以上もエントリーがあったのに、このコメント。

ホリプロスカウトキャラバンか!? どんな確率で人を探そうとしてますのんって話ですよ。

 

これは余談の上に私の憶測ですが、「ヤル気のある方、応援します!」というフレーズを独立させたのは、ミスではなく、求人サイトの担当者が意図的にそうしたんだと思っています。

彼らの仕事は、クライアントが良い人材を採用するお手伝いですが、それ以前に求職者のエントリー(反応)をどれだけ出すかを最優先に考えています。

なぜなら応募者の数で、媒体の良し悪しを判断されてしまうからなんですね。

「広告を出したのに反応ナイやんけ!」ってクライアントから文句を言われるのが、何より困るわけです。

私自身の経験でも、採用条件をガチガチに絞った原稿をコチラから渡すと、てきめんに嫌な顔をされたり(笑)ひどい時は、さらっと表現を変えられそうになったこともあります。

今回の場合も、企業側担当者の伝え方が不明確だったり、求人サイト担当者の質問の仕方が巧妙だったり、おそらくその両方なんだと思いますが(笑)結果的にはあのワンフレーズを足すことで、大量の水増しに成功したんだと私は踏んでいます。

求人媒体と企業が望むゴールは決して同じではない、という事実は知っておいたほうがいいでしょう。

 

採用活動は、求職側と採用側のミスマッチを減らすことに注力しよう

今回の私が見た採用活動は、

『欲しい人材のイメージが、求職者に正しく伝わっていない』

という状況がもたらす悲劇を物語っています。

 

採用活動は、求職側と採用側のミスマッチを減らすことに「最大限の注力」をしないと、大量の時間とお金が無駄になります。

重ねて言いますが「ちょっとした無駄」ではありません、「大量の無駄、スゲー量の無駄」です。

 

たとえば求人広告を作る際に、欲しい人材を言葉で表現しきれていなかったり、欲張って一人でも多くの反響を得たい、面接希望者を出したいとハードルを下げるだけで、様々な無駄が発生します。

明らかに魅力的ではない、適性の低い大量の応募者たちへの対応に追われる担当者の時間と労力、その時間と労力に対して支払われる人件費。

これらはすべて、欲しい人材を正しく求職者に伝えられないことで生まれる「ムダ」ですよね。

 

採用活動の目的は、あくまでも自社が望む人材を採用することです。

ですので、条件をゆるめて求人を行うこと自体がムダなんです。

もしハードルを下げてでも面接希望者を増やしたいというのなら、適正の低い人材をきちんと育てる覚悟で採用する必要があります。

経験や技術の有無だけなら、入社後の教育で何とでもなりますが、素養や資質を妥協して採用した場合は、入社後の教育は相当困難なものとなる覚悟が必要です。

それこそ素養も適性もある人材を育てる何倍もの時間がかかりますし、ミスマッチを理由に退職する人も少なくないわけですから、効率は非常に悪いと言わざるを得ません。

 

また、更に気をつけたいのが、採用条件や待遇、組織の制度や風土についてウソを言ったり、ゲタを履かせた表現をして採用するのも論外です。

コレ、実は中小企業では非常に多いんです。

残業代がつかないのにボカした言い方したり、有給取れない空気なのに有給制度を謳ったり、完全なワンマン経営なのに風通しのいい職場だと言ったり(笑)

要は、入社後すぐバレる嘘をついて採用しても、気付いた彼らはモチベーションが下がって、遅かれ早かれ必ず辞めていくので、時間とお金のムダになるということです。

 

採用条件と求職条件にミスマッチの無い人材が、組織の売り上げ、利益、文化を作る

たくさんお金を使って、人を集めて面接したのに「なんだかなぁ~」って新人しか採用できない、いい話をいろいろ聞かされて入社してみたら「なんだかなぁ~」って会社だった、どっちにしても彼らが育つ気はしませんよね。

せっかく採用した人が辞めたり、辞めはしないまでも組織が望んだ成長とは程遠かったり、ミスマッチ採用のツケは、様々な形で組織を圧迫します。

欲しい人物像や求める資質を、正しく求職者に伝える。
望んだ形に人材を育て切ることも出来ないのに、採用条件のハードルを下げない。
入社したらバレるのに、求職者に組織の弱みやグレーゾーンを隠したり、ウソをつかない。

『ひと』の力が、売り上げや利益だけでなく、組織そのものを形作ります。

それだけ大切なものなんですから、人材だけはしっかり集めて、しっかり選んで、しっかり育てたいものですね。