中小企業の猿真似厳禁!! 大手外食チェーンが仕掛ける「ちょい飲み」にみる、低価格戦略の肝
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大手外食チェーンが手掛ける「ちょい飲み」が好調です。低価格で気軽に利用できる敷居の低さで大手居酒屋から客足を奪っていますが、そこには大手ならではの戦略があり、中小・個人経営規模の飲食業や、これから独立・起業を志す方々が「安売りは儲かる」という皮算用で参入すると、大やけどを負うはめになります。大手じゃないと享受できない低価格戦略のメリットとは何でしょう。
目次
居酒屋から客足を奪う、ちょい飲みという存在
吉野家の「吉呑み」をはじめ、バーミヤン、ケンタッキーフライドチキンの一部店舗などでも酒類やおつまみのメニューを扱うようになり、それらの施策が集客に寄与しています。大手の居酒屋よりも価格をやや低く設定し、居酒屋では慣例となっている「お通し」も無い為、気軽さと安さが支持された結果といえます。
メディアではこうした報道とあわせて、大手居酒屋チェーンの減収減益が語られることが多い為か、安売りにこそ商機があるかのような受け取られ方をする向きもありますが、実はそうではありません。安さや気軽さばかりがフォーカスされていますが、彼らには「安くしても儲かる仕組み」が存在するのです。
ちょい飲みと、ディスカウント居酒屋の決定的な違い
ちょい飲みを展開する事業者に共通するのは「本業として、安定した飲食チェーン組織を保有している」という事実です。個人事業主や異業種からの参入した新参企業が、独自にちょい飲み専用の居酒屋を開業しているわけではありません。この違いは、ふたつの点で非常に大きなメリットを与えています。
ひとつ目は、スケールメリットを最大限に利用した仕入れが可能だということ。ここで扱われる食材は、既に店舗で使用されているものであったり、他業態のグループ企業から仕入れられてるものが多く、調達先を新規で開拓する必要がありません。既に取引のあるルートから仕入れ、既に取引のあるルートで他の食材と一緒に納品するのでコストを抑えることが可能です。
『マグロの刺し身はグループのすし店「京樽」から、メンチカツは総菜の「おかずの華」から入手している。ステーキ店「どん」からすじ肉を仕入れて生まれた「牛すじ煮込み」は人気メニューとなった。通常の食材と一緒に運ぶので物流費は増えない。刺し身はあらかじめカットしてあり、店での調理が不要なので店員の新たな教育もいらない。
吉野家「ちょい飲み店」が人気、その理由は 日本経済新聞 2014/08/13』スポンサーリンク
ふたつ目は、彼らの本来の目的は「既存店舗の有効活用」だということ。本業のピーク時間帯以外の、いわゆるアイドルタイムの客席の空きをどう埋めるかという発想で実施されていることが多く、夕方以降など時間帯を区切って業態をチェンジさせているのはその為です。本業で満席にならない時間帯を活用して、本業の訴求では来店しない別の客層を取り込むことに成功しているわけですね。
薄利多売を追及するよりも、安くても利益の出る仕組みを
彼らのスタンスで共通するのは、決してちょい飲みという「低価格居酒屋のビジネスモデル」を確立したいのではないということです。大手居酒屋より低い価格で展開し、実際に客足の一部を奪っている為、その安さだけが取りざたされることが多いですが、いわゆるディスカウント戦略とはまったく別の目的が存在します。
消費者としては、商品が安く購入できる安売りは歓迎したいところですが、いち事業主が安易なディスカウント販売に手を染めるのは大きなリスクが伴います。低価格戦略の継続には並外れた資本力が必要な上に、途中で低価格路線を変更しようとしても、価格の安さに魅力を感じて購入していたお客様を、つなぎ止める事が極めて難しいからです。
ひところ値上げと共に品質やサービスの向上を謳った牛丼大手三社も、軒並み低価格での訴求を再開しています。これは安売りで集めたお客様に、それ以外の価値基準を提示する事の難しさ、また新しい価値基準に共感する新規顧客と、それに付いて行けない既存顧客との入れ替えが、どれだけ難しいかを証明しています。
事業主にとっての安売りは劇薬に相当します。訴求力が非常に高い反面、安さに慣れる消費者の感覚を刺激し続ける為に、更なるディスカウントを継続実施しないと訴求効果が維持出来ないという大きなリスクがあります。もし中小・個人経営規模の事業者が安さを武器に集客したいのであれば、ただ単に安く仕入れるルートを確保するだけではなく、今回のケースのように「多売をしなくても、赤字にはならない仕組み」を、あらかじめ用意しておくことが望まれます。
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